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『はい』と答えそうになって三沢さんは口を閉じる。
僕は横目で佐竹さんを見る。
佐竹さんは苦笑いして、答えろと表情で告げた。
「三沢さんの彼女は、別の部署だけど同じ建物にいて、昨日は彼女の部屋に泊まってた」
三沢さんは口をあんぐりと開けて、信じられないと言った顔をする。
斉藤さんも同じだった。
「三沢……合ってるのか?」
「はい、斉藤さん」
僕の人付き合いが少ない理由はこの所為だ。
訓練したわけでも何でもない。
何故って言われても困ってしまう。わかってしまうのだから仕方が無い。
どうわかるのだ? そう聞かれても困る。
多分、笑っている人の表情を詳しく解説するのが難しいのと同じだろう。
「納得したのか?」
佐竹さんの言葉に、二人は無言で頷いた。
疑念から口惜しさに表情が変わったのは、僕の様な小僧に任せなければいけないからだろう。
そりゃそうだ、おそらく犯人であろう奴を捕まえて最後のツメを僕に託すのだ。不愉快極まりないだろう。
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