1 乾杯

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乾杯(1) 二十歳の祝い ーーーーーー 「乾杯!」 「里桜(りお)、二十歳の誕生日おめでとう!」  この日。二人の兄たちから祝福され、大人の階段を一歩上がる。その先には、ティーンだった今までとはグッと違う新しい世界が待っている。  五つ星であることををそのまま主張するようなネーミングの「ファイブスター・ホテル」で祝う、記念すべき二十歳の誕生日。  ホテルの二桁階にあるラウンジレストランからは、夜になるとそれこそ宝石箱をひっくり返したような都会の夜景が展望できる。ゆったりした優雅な内装に包まれ、心ゆくまでのリラックスを満喫する。  ソフトな照明がつくり出す雰囲気たっぷりのなか、バイオリンとピアノのライブ演奏がさらりと流れる。まさに記念すべき日に相応しい、高級ホテルで過ごす贅沢なひととき。 「崇(たか)にいも裕(ひろ)にいも、知っていたなんてずるい」  けれども、本日の主役である里桜は、普段は薄めで形の良い唇を今は形悪くブッと尖らせ、向かいの兄二人に遠慮なく文句をぶつける。  末っ子の里桜にとって、二十歳になったことは、胸のワクワクどころか、心の底からふつふつと湧き上がる怒りでしかなかった。
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