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その間も、兄二人は「これからどうしたものか」とそれぞれに頭の中で策を練るが、グラスの中のビールが減るだけでこれといったひらめきもない。
保育園のママさんたちの悩み相談を受けるよりも、大学の研究を掘り下げるよりも、里桜のこの問題に取り掛かる方がずっと難しい。二人とも、肺が裏返るような深いため息をつくばかり。
きっとこの時間までに、里桜は何度も泣いたのだろう。アルコールを口にする以前に、目の周りがほんのり赤く、ぼわんと少し腫れていた。
里桜が泣いた理由、ここまで腹を立てている理由、兄たち二人はその理由を知っている。今ここで、里桜はそれを聞かなければならない。
「知ってることを何でも教えてくれ。ガキの頃からおやじにぶん殴られて、アニキたちのチ○コ見て育ったんだ。こう見えてもキモは据わっている!」
里桜の言葉に兄二人が「あわわ」と慌てる。
「でかい声で騒ぐな、里桜。だからここ、ホテルなんだって。ファイブスター」
「そんなこと関係ねえだろっ!」
「あるよ。マナーってもんがあるだろ。周りのお客に気を使うとか」
「それに、前から言ってるだろう。お前、女の子なんだから、その言葉使いと……」
「チ・・とか言うな」
「うるせえ。そんなことはどうでも良いんだよ!」
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