1 乾杯

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 里桜は、ポニーテールにまとめ上げた長い髪の、その毛先をブンブンと揺らして息を巻く。  里桜の普段のファッションは、どちらかと言うと、シンプルなカジュアルスタイル。得意のスポーツによって洗練された、手足の長いスレンダーな体型に良く似合う。  クリームのような白い肌に、モデルのような小顔でありながら、化粧っ気なくすっぴんでいることが多い。  そのため、クルクルとよく回る大きな目の下、頬の上に散らばる健康的なそばかすが化粧で隠れることがない。  いつまでも少女であることを象徴するようなそのそばかすが、二人の兄たちにとってチャーミングな愛すべき妹なのだ。  黙っていればキュートでかわいいのに、このガサツなしゃべり。加えて、お洒落なカクテルを手に堂々のチ・・発言。  これでは、素行を見聞きした事情を知らない人たちから、どんな家庭に育ったのかと思われてしまっても仕方ない。 「大体、アニキたちが知ってたってのもむかつくんだよ。いいから吐けよ。知ってること全部、今すぐここで吐け!」  恐らく、今の里桜のイライラ・レベルは100のうちの100超え。計量器の針を振り切る勢い。ラウンジレストランで騒ぎ立てない代わりに、声を震わせる。
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