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テーブルには、里桜の飲むカクテルの色に合わせたような、ピーチ色のバラの一輪挿し。その横には、クリアなグラスの中のクリアな水に浮かぶフロートキャンドルが仄かに灯っている。
そんなお洒落なテーブル・コーディネーションも、自分の身に起こっている不幸で頭がいっぱいの里桜にとっては、何のお飾りにもならない。
「ビールのおかわりもお持ちいたしましょうか」
清潔な白いシャツに黒の蝶ネクタイ、細身のベストに細身のスラックスをスマートに着こなすウエイターが、姿勢良くその場にたたずむ。
「お願いします。あと、オーダーもお願いします」
「かしこまりました」
年若いそのウエイターは、接客の礼儀について厳しく教育されたのであろう。自分の担当する客が、ここで食事を楽しんでもらえるように最大限の努力を払う。
できる限りの心地良い時間と空間を提供し、演出するのが自分の仕事、とばかりに気持ち良く対応する。
長男の崇が三人分のディナーをオーダーする間、次男の裕がこのレストランの雰囲気を伺うようにテーブルの周りをぐるりと見回した。
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