第1章    憧れの彼

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新緑が、その葉ごと透けるように、陽ざしを感じさせていた。 ビルの谷間に存在する小さな自然。 木陰のベンチで、野々村恵美はランチを食べていた。 「毎日、ここでランチ?」 と彼女に声をかけたのは、同じ部署で働く吉田雄太だった。 「ええ、この頃こうしているの。気持ちがいいから」と彼女はこたえた。 彼は営業から戻って来たのだ。 「ランチにはいい場所だね」と彼は微笑んで言うと、オフィスのあるビルに向かって歩きだした。 彼の後ろ姿を見ながら、彼女は思った。 私の気持ちなんて気づいていないだろうな。
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