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その翌日だった。
彼女は、オフィスビルの回転ドアを開けて、出社しようとしたときだった。
誰かとぶつかった。
彼女の手からバックが落ちた。マグネットのバックのボタンがはずれ、中身が散乱した。
「ごめん」と彼が言った。
なんと、相手は雄太だった。
「急いでいたから、ごめん、ごめん」と彼は言うと、慌てて、バックから飛び出した物を拾い集めた。
「大丈夫よ」と彼女は言うと、かがんで一緒に拾った。
彼は、拾い集めた物を手渡すとき、彼女に言った。
「君、この頃元気がないね」
「気のせいじゃない。何もないもの」と彼女は冷淡にこたえた。
「これから、仕事に出るのね。吉田さん」と彼女は言った。
「ああ」
「気をつけて、いってらっしゃい」と彼女は言うと、足早にエレベーターに向かった。
エレベーターに乗り込むと、彼女はその天井を見上げた。
涙がこぼれそうだったから。
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