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彼女は急に青ざめた。
「そう、それがどうかしたの」
「木田さんと言い合いになったんだ」と彼が言った。
「それが何なの?私には関係ないでしょう」と彼女は言った。
「それがメールの件でね。僕に送ってくる彼女のメールが、どこか不自然だった」
恵美は傘を下げ、苦しい表情を隠した。
「木田さん、白状したよ。メール、自分が書いたんじゃないって」と彼が言った。
「それって、あなたと彼女との問題じゃない」と彼女は言った。いつしか声が震えていた。
「木田さんは友達に頼んだと言っていた」
「そうなの」と彼女はこたえた。
彼は言葉を飲みこんだ。
「その友達って、君じゃないか?」彼は静かに言った。
「ばかを言わないで」と彼女は言うと、再び地下鉄に向かって歩き出した。
彼女は泣いていた。
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