第1章    憧れの彼

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吉田雄太が営業技術部に配属されてから、半年がたっていた。 あたたかくて、知的で笑顔の素敵な人、恵美は彼に惹かれた。 しかし、彼女は自分に自信がなかった。 おそらく、私という人間は他人との摩擦を避けるために、控えめにしているくらいが取り柄とでも、みんなに思われているのだろう。 恵美は短大を卒業してから、契約社員としてずっと勤務していた。 他の女子社員には、一般職とか総合職の華やかな女性たちがいた。 彼だって、そういう女性に目がいってしまうだろう。 とても積極的にアプローチなんてできない。 彼女はアパートに帰ると、詩を書いていた。それが彼女の趣味だった。 彼女は愛(いと)しい人を想い、美しい言葉を紡いでいた。 それは、届かぬ想いであり、永遠の秘密の想いだった。
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