1章 バディ結成

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1章 バディ結成

 アリシア帝国唯一にして世界最大規模の巫女養成女学院の大門を出たところで、セシル・コーデリアは感慨深いものを感じていた。 それもそのはず、親の元を離れ学院の寮へ住み込みで学び始めたのが6歳。 そして現在、16歳となり約10年間という長い期間を経てようやく巫女としての知識、実力共に大巫女様に認められ卒業に至ったのである。 楽しかったや辛かったなどという安易な言葉だけでは到底表すことはできない思い出がそこにはあった。  隣を歩く親友、学院では一二を争い切磋琢磨した(永遠のライバルと勝手に思っている)ミリア・バース・アレーティアも、物思いにふけっているようだった。 普段は無表情で氷のような冷たさを連想させる表情だが、ミリアの蒼い瞳が若干潤んでいるのをセシルは見逃さない。  気持ちが落ちたままでは居心地が悪いと思い、声をかけることにした。 「私たち...地元も近いし、またどこかで会えるわよ」 「そうねー。会おうと思えば馬車ですぐだもの。でも、私もセシルもこれからは少し忙しくなるわよ、きっと」  卒業を迎えた学友は散り散りに出身地へ帰る。 これからは各々が立派な巫女としてやっていくのだ。  巫女の主な役割は一般的にバディと呼ばれる相方を組み、各地で危害を加えている魔物を浄化する。 それが、巫女の主な役割であった。 「ねぇ、ミリアのバディって誰になるのかしら?」 「そうねー。お爺様が特別にお選びになったそうよ。別に私は誰でも構わなかったのだけど。 セシルには、機会があれば紹介するわね」  ミリアは目にかかった前髪を指で逸らし、横目にセシルを見て、自分の話はどうでも良いと言いたげだった。 すでに知っている。もしくは心当たりがある。そんな感じであった。  ミリアは、アリシア帝国皇帝陛下の孫にあたる。つまり王族であり、それに見合った騎士様がバディとなることが約束されている。 さぞ優秀なバディと組めるのだろうと容易に想像できた。 「それよりー。セシルのバディは決まっているのかしら?」 「それがまだ名前も年齢もわからないのよ。一応、今日のお昼過ぎにお父様が紹介してくれるみたいなんだけど...」 「気になるわねー。学院首席に相応しい殿方なのかしら?」 ミリアは口元だけを緩め、ふふふ、と笑った。  バディは基本的に帝国の騎士団所属の者か、もしくは腕に覚えのある無所属の剣士であったりする。 当然、どちらも男性である。 セシルやミリア、そして今期卒業した彼女ら新米巫女も含め、異性に接する機会は乏しかった。 だからこそ、バディとなる異性が気になるのはしょうがないとも言えた。
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