1章 バディ結成

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「相応しいかどうかはわからないけど、お父様の紹介ってのがまた怪しいのよ」 「娘に紹介するくらいでしょ?それなりの騎士様だと思うけど、違うのかしら?」 「お父様のことだから、家柄の良さとかを重視した、いいとこの坊ちゃんを選ぶに違い無いわ」  不機嫌を顔に出しながら、セシルはわざとらしくフンッと鼻を鳴らした。 それにね、と思い出したように付け足す。 「家に帰る度にお父様は結婚の話をするのよ。 いい人はいないのか?だとか。もういい歳になったからそろそろだなぁとか。わざとらしいのよ。だから、お父様の紹介は少し信用できないかも」  バディの紹介と言う名目ではあるが、ようは親が用意したお見合い相手の紹介みたいではないか。 一時期、風の噂で聞いた過保護で貴族出身の父親がよくやるパターンと思えてならないのだ。 「じゃあ、どんな人がいいのよ」  父親に対しての文句や不満を垂れ流しているセシルを面倒に感じてきたのか、ミリアは呆れ気味に溜め息を吐いた。 そして安易に言葉にしたものが失言だったとすぐに後悔することになる。 「あ、それ聞いちゃう?私、意外と理想高めなの!」 「えーと、地雷を踏んだかしら。やっぱり今のなし。時間を戻してもらってもいいかしら?」 「まずは誠実でー、紳士的なのも必要よね。 それと、顔は整っている方がいいわね! あとあと、私が魔法使うまで絶対守ってくれる強くて勇気のある人がいいわ!それからーーー」 「待って。少し落ちつきなさい」  ミリアは何かに取り憑かれたように饒舌になるセシルに待ったをかけた。  セシルは集中すると周りが見えなくなる傾向がある。学院時代でも親友として、苦労する場面が少なからずあったのだ。 「まだ、たくさんあるのにー」  バディを組むということに、特別な想いを抱く巫女はセシルだけではない。  各地で活躍している有名な巫女のほとんどが、優秀かつ人望に溢れる騎士様がバディであるのも事実であった。 理想が無い人などいない。しかし、どうもセシルのは他の新米巫女の中でも度が過ぎているようだった。 「むしろまだ要望があるとは恐れ入るわ。あなた、そんな完璧な人いないわよ」 「いるかもしれないじゃない?」 「いたとしても、そんないい優良物件はすぐに良いとこの姫様とかに取られていると思うわ。 それに、少しは現実を見ないといつか痛い目に遭うわよ」  楽観的というより、世間知らず。 理想と現実のバランスを考えないセシルに対し、ミリアは吐き捨てるように、少し厳しさを含ませて忠告するのだった。
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