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「ニャニャフィちゃん、すごいね。命助けたりとかできちゃうんだね…。わかった。私、決めたよ。唯斗の命が助かるなら、記憶なんていくらでもあげるよ」
「その決断で後悔はないんだよねー? もう時間がないから始めてしまうけどいいよねー?」
鈴がコクリと頷くのを見て、ニャニャフィは両手をめいっぱい広げた。何やら呪文のようなものをブツブツとつぶやいている。広げていた両手を前に持ってきて、鈴の額の前あたりにかざす。ピンク色のかわいい肉球がさらされた。
「…これで、鈴ちゃんは彼氏のことを忘れて、前みたいにボクのこと大事にしてくれるはず…」
「あ、う…」
目には見えない稲妻のようなものが落ちてきて、鈴はその場に倒れこんだ。
ニャニャフィは鈴の体をしっかり抱きとめて、その顔を心配そうに覗き込む。
「鈴ちゃん…」
鈴がうっすらと目を開く。
「う…ん、ここは…」
「間に合ったー!?」
死を免れたらしい唯斗が自転車のブレーキをキキーと言わせて到着した。
不審なでかいぬいぐるみに抱きとめられた鈴の姿を見て、唯斗は自転車を放り出すようにして駆け寄ってくる。
「大丈夫か? 鈴!」
唯斗の顔を鈴がまじまじと見る。
「ゆ、ゆいと…?」
「え…」
ニャニャフィが絶望を帯びた声を発した。鈴が唯斗のことを容易く認識してしまった。それはつまり、鈴の最愛の人が別に存在しているということに他ならないわけで。
「何があった? てか、このでかいぬいぐるみの人は誰よ」
そういわれて、鈴はニャニャフィに目をうつす。数回ぱちぱちと大袈裟に瞬きした。
「なにこれ…。あの…、どなたですか?」
もはやニャニャフィは完全に固まって動くことができなかった。
「嘘…だよねー…」
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