14人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、おとーさんだ!!」
銀行の自動ドアの脇で、優里が手を振っていた。
"あ、おとーさんだ"じゃないよ。
どれだけ心配したと思っているんだ。
良い年して泣きそうにもなったんだ。
そして、優里の隣にスラッとした男が立っていた。
黒い質のよさそうなスーツ姿。
一瞬銀行員かと思ったが、今日は日曜で銀行が閉まっている。
通りがかりの人……か。
人だよな。
そう、心のなかで一度確認をとらざるを得ないくらい、作り物みたいだ。
美人すぎて作り物みたいだ、というわけじゃない。
整形かどうか疑っているとかそう意味でもない。
確かにその男は美人なのだけれど。
女顔ではないが、そこら辺の"美女"が美女と呼ばれることを恥じらう次元で綺麗だ。
でも、上手く表現できないが、生き物にしては拭いきれない違和感がある。
マネキンに魂を無理矢理押し込んで動かしているものを見せられているような、そんな感覚。
その男はしゃがむと優里に視線を合わせる。
「あれ、お父さん?」
「うん、そう。
ゆりの、おとーさん!!」
「良かったね、迷子のお父さんが見つかって」
「うん!!」
男はニコリと笑みを浮かべると、立ち上がって優里の手をとる。
そして、静かに俺の前まで来た。
近くで見れば見るほど、作り物感がする男だ。
「おとーさん、まいごになっちゃ、だめ!!」
優里が抱きついてくる。
それを受け止めて、抱き上げる。
今、楽しげに笑ってるけれど、本当は不安だったに違いない。
いつもはすぐに"降ろして!!"と女王様よろしく命令してくる。
けれど今は、小さい手でぎゅっとしがみついている。
悪いことをした。
「ごめんな、優里」
「いいよ」

最初のコメントを投稿しよう!