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男が指を差した方向から、本当に隕石が落ちてきていて、そしてそれを、巨大な何かが捕まえようとしている。隕石はどこかミサイルの様にもみえる。ミサイルというか、あれは槍?
巨大な生き物は人に似ているようで違う。背中に何本か棒のような物が生えていて、その間を薄い膜が張られている。羽みたいだと思った。そして、この角度から確認できる手の様なものは三本。足は見えない。それともないのかもしれない。それが人間に見えてしまうのは、私の目の錯覚か。
巨大生物はその隕石を難なく捕まえると、こちらまで聞こえてくる豪快な噛み砕き音。破片が落ちて建物に当たっている。
それは全て、さっき男が語っていたそのままだった。
「楽しかったよそれなりに」
「嘘…でしょ…」
思わずそう漏らす。
事態が飲み込めないでいる私を笑う声が聞こえて呆然と振り返ると、私を笑っているのではないことがわかる。
心底、わくわくしているような顔。それが無邪気過ぎて、とても気持ち悪い。
「でも、人間ってしぶといからさ、ゴキブリのこと言えないくらいに。だから、もしかしたら生き残れるかもね。生き残ったら、また会おうね」
その笑顔は確かに覚えてる。だけど思い出せない。
もう少しで思い出せそうなのに。
あんた、あんたは――。
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