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「ミコト……」
自分の声で目が覚めた。
意識が飛んで、目を覚まして、横に倒れているミコトの顔を見てやっと思い出したんだ。
どうして忘れていたんだろうなんて考える暇もなく、私は肩を掴み揺さぶった。
「ミコト、おいミコト!」
「……、やあ、アンナ。おかしいな、僕のことがわかるのかい?」
「わけわかんないこと言ってないで、立てる」
「立てるさ。だって、僕は死なないから」
「何言ってんの」
「ねえアンナ、さっき見たこと、全部僕が引き起こしたって言ったら、信じる?」
優しく微笑んで、嘘なんて言ってる目をしていない。頭を強く打ってしまったんだろうか。
そこで初めて自分の周りの景色に目を奪われた。
建物が何もなくなっていた。あるのはその残骸で、その残骸には、まるで何十年と経ったみたいに植物が根を生やしていたり、巻きついたりしていた。
わけがわからない。
何が起こってるの?
「なに、これ」
「ああ、世界がリセットされたんだよ」
「リセット?」
「そう。人間が、と言った方が正しいのかな」
「意味、わかんないんだけど」
「そうだろうね」
「なんで、あんたはそんなに、落ちついてるわけ」
「僕が望んだ世界だから」
「どう、いう」
私がうろたえているのがおかしいのか、寝たままミコトはくすくす笑った。
それに怒ることも首を傾げることもできない。
ただ、この飲みこめない状況で、冷静に、というかいつもと変わらない穏やかさで寝そべっていることが、怖く思えた。
見たことのない、気味の悪い生き物を見ている気持ちだ。
「僕はね、人間が嫌いなんだ。人間が生きているから戦争が起きる、自然が壊される、生態系が崩れる、他の種が絶滅する。人間って生き物は、害しかない。害しかないものはなくさないとじゃない? だから願ったんだ。人類の絶滅を。願っただけでどうにかなるわけないと思うでしょ? でもね、僕には出来た。どうしてでしょう? 正解は僕がこの物語の書き手になったから」
何を言ってるのかわからなかった。
おかしなことを言ってるのに、昨日の出来事を淡々と話す様なその口ぶりが気持ち悪くて、微笑みは、グロテスクにさえ見えてきた。
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