第1章 コレはデートか女子会か……

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「おはよう、ナナ。付き合わせて悪いな」 柔らかそうな黒髪の青年が、微笑む。 「ううん。私も、デパートに用事あったから丁度よかったわ。それより、待った?」 私は、走って広がった前髪を整えながら、答えた。 「待ってないよ。今来たところ」 「そっか……。よかった。さっ、行こう!」 二人は、歩き出したーー。 黒のスキニーパンツを履き、黒の半袖Vネックシャツを着た彼に付いて行く。 私は、フワフワしたワンピース。 こんなの、どう見ても恋人だろう! しかも、美男美女! 誰もが羨み、讃えるカップルだろう! なのに、実際は…… 「もう、聞いてー!彼ね、『悠太郎のこと、そんな風に見れない。つうか、もう関わんな』とか言うのよ!あんな奴だなんて思わなかった!」 「その台詞、いつも言ってんじゃん。ユウは、男見る目無いんだよ」 「ナナも、彼氏いないくせに……」 誰のせいと思ってんの?と言ってやりたくなる。 そう、私、"伏目ばなな"が十五年近く片想いしてる"長谷部悠太郎"は、ゲイなのである。 つまり、私は恋愛対象外というわけだ。 それでも、嫌いになれないのが乙女の性……。 始めは女の子が恋愛対象だった。 しかし、中三の夏、気付いてしまったらしい。 彼との出会いは、幼稚園。 そこから、当たり前のように小中と同じ学校だった。 ことは、中学最後の夏休み、始まってすぐに起きた。 「ナナー!ナナ、大変だよー!」 悠太郎の声で風鈴が揺れる。 「何よ?他人の家に勝手に上がった上に、大きな声出さないで!」 思えば、「ばなな」というキラキラしてないキラキラネームを気にしていた私を「ナナ」と呼ぶ処が好きだったんだろう。 ついでに、ユウ以外の男子は、"伏目さん"と呼んでいた。 やっぱ、美少女は辛い……。 「また、勉強してんの?俺と同じ北高だろ?余裕じゃん」 余裕じゃないから、やってんのよ!とつくづく言いたくなる。 「てか、なんで北高?遠くない?」 あんたと同じ高校に行きたいからよ!とは言えず……、 「偏差値高いから……」 「ふーん……」 北高は、この辺でも一、二位を争う難関校だ。 悠太郎は、授業を受けるだけで、点が取れる天才タイプ。 こう言うのも、無理はない。
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