第1章

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「なんか、危険な感じが」  千晴がドアを見てみると、徐々に林田に向けて傾いていっている。 「あっ」  急に取っ手がもげ、林田は尻もちを搗く。と同時にドアがぎいっと音を立てて傾いていく。 「やばい」 「先生が圧死する」  これは手助けがいると、男子たちはわらわらと駆け寄った。そしてドアが完全に倒れる前に捕まえると横に除けた。 「はあ。まさか取っ手が取れるなんて」  まだ握ったままだった取っ手を投げ捨てると、林田は立ち上がって中を覗いた。ドアを除けた男子たちは林田の後ろに立って同じように覗く。 「これは、雑巾の山?」 「何だ、つまらん」  林田が首を捻る横で亜塔がそんなことを言う。あれだけゴム製品に引いたというのに、興味は人並みにあったらしい。 「期待外れだな」  動画問題で開き直ったらしい迅がそんなことを言い出す。たしかに何か過激なものが落ちているかと桜太も思ったが、千晴の視線が怖いので同意できなかった。 「それにしても。学校中の雑巾を集めたってくらいあるな」  覗いていた楓翔が呆れ返った。これだけ山のように布を積む必要性が解らない。 「いや。雑巾だけでなくカーテンも放り込まれている」  汚い布の山に、見慣れたものを見つけてしまったのは芳樹だ。よく考えると化学教室の窓にカーテンがなかった。ひょっとしてこれだろうか。 「何だか問題だらけだな、このトイレ。それにほら、何だか下の方が濡れているぞ」  亜塔が目ざとく布の色の変化に気づいた。たしかに下の方は水で濡れたらしく色も変わっているし湿っている。 「何でだろう。この状態で水を流すことは無理だし、和式の中に溜まっていた水だってとっくの昔に吸ってしまっているだろうに」  不可解だと桜太も首を捻った。
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