第1章

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 さて、芳樹が落ち着いたところでメンバーは化学教室に引き上げていた。しかし片付けずに放置するのは良くないだろうと、莉音が林田に後始末を押し付けていた。どうやら利用できると解ったらとことん利用する気らしい。  そういうわけで、桜太が司会進行役となって問題点をまとめることとなった。 「まず、大前提として下で排水管が繋がっているってことだな」  黒板に大きく桜太は排水管と書く。 「あの使用不能という日本語は正しかったな。一方を使うともう一方から溢れてくる。仕方なく片一方を布で埋めて使えないようにしていたわけだ。これは学校が出来てからずっと解決していない問題だな」  楓翔は言いながら呆れ返っていた。そんな大問題をよく二十何年も放置しているものである。あの古ぼけた紙は時間の経過を正しく伝えていたのだ。 「あの異様なゴムの山を築いた奴は気づかなかったってことか。繋がっていることを知っていたら、あそこに捨てていかないよな」  動画問題に晒されたり意味不明な状況を目撃した迅は、数字中毒の症状が酷い形で出ていた。到底高校生では解けないような難解な数式を、恐ろしい勢いで解いている。おそらくミスはしていない。 「そうだな。すると、個室を使っていたのは一人か」  優我は呑気にそんな感想を漏らす。他に使った人がいれば騒いでいるだろうくらいなものだ。 「迷惑な奴だな。煙草もそいつのせいか?」  ようやく頭が再起動した芳樹は盛大な溜め息を漏らす。この学校に不良でありどえらい変態がいるというのも問題だった。しかし見た目から不良の生徒などこの学校にいないので犯人が解らない。 「すすり泣きもそいつのせいってこと?動画とか何かの音だったと」  白けたように千晴は言った。何だか男子の部屋でエロ本を見つけてしまったような気分である。
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