白猫とサイコロ

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 馬鹿でかい兵帽を頭に乗せて、ふらふらしながら騎兵銃を担いでいるのがスバル。こいつも一等兵で、軍では一番年下の十四歳。俺が兵士になったのが十五の時だったから、徴兵の年齢が少し早まったんだろう。こいつには今年十歳になる弟と妹が何人かいたはずだから、もう少ししたらそいつらも徴兵される。  サザンカとの関係を隠したいらしいが、俺にも他の誰にもとっくにばれていることに気付いていない。  南兵のいるであろう方向(まだ相手は姿を現していないから、何とも言えないが。この南兵のやり方を卑怯だと北側の人間は言うが、俺にとっては別にどうでも良い)をじっと睨んだまま、にやけそうになる口元をぐっと押さえ込んでるのが月子。この女がどうしてこんなに嬉しそうな顔をしているのかと言えば、それは南兵に恋人がいるからだ。トンビとかいうその野郎に会うために、いつもデート気分で戦争に参加している。  サザンカや緑と時々楽しんでることを向こうにばらしたらどうなるか、なんて、俺が時々悪趣味なことを思い付いちまうのは、こいつがあんまり幸せそうだからだ。サイコロはいつも「愛してる」なんて言うけど、俺の名前すら間違うんだから信用ならない。  ……で、そんなことを考えながら自動小銃を退屈そうに弄っている白髪のチビが……そう、俺だ。背が低くて痩せてる上に、顔まで女っぽいと(主にサイコロに)良く言われるが、一応性別は男。白猫一等兵、この道六年のベテラン兵士であります。けど一向に一等兵から昇格しないし、俺自身も別にどうとも思わない。アドルフのおっさんみたいに出世欲があるわけでもないし、兵長みたいには何十年経ったってなれそうに無いからだ。  最後に、俺の隣にいるのがサイコロ。こいつだけ新人だから、まだ見習い扱いの二等兵だ。俺が拾う前にどこで何をしていたのか、最初は皆気にしてたけど最近は誰も何も言わなくなった。多分サイコロがあんまり馬鹿だから、南側のスパイじゃないかなんて疑うこと自体面倒になったんだろう。  こいつは戦争の意味もわかっていない幸せ者。正直、ちょっと羨ましい。  以上、軍曹も入れて総勢八名が北兵。  少ないと思うか? 俺も同感だ。それもこれも人間とエルフ族が絶滅競争みたいに凄い勢いで減っているためで、南兵も十人くらいしかいない。だから俺は南の方がずっと住みやすいなんてちっとも思わないし、考えないことにしている。
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