白猫とサイコロ

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【1・白猫】  例えばここに、二匹の蛇がいたとする。片方が片方の尻尾に噛みついて、そこからずるずる共食いを始める。喰われている方の蛇も、ただ襲われているわけではない。喰っている方のガラ空きの尾に喰らいつき、やはりまた同じようにずるずる飲み込み始める。  このようにして一本の輪となった蛇は、ぐるぐる回りながら延々と飲み込んだり飲み込まれたりし続ける。蛇でできた輪っかは、少しずつ、着実に小さくなって行く……。 「……っていう有名な話があるらしいんだけどよ、これって最期どうなるんだ? やっぱり、消えちまうのか?」  俺の身体に覆いかぶさったままの格好で、相方の男は突然こんな質問をぶつけて来た。その馬鹿馬鹿しすぎる内容からわかる通り、こいつはあんまり頭が良くない。いや、はっきり言って、こいつ以上の馬鹿をこの地球上から探し出すことの方が難しいだろう。少なくとも、俺は見たことが無い。 「その前に、両方とも動けなくなっちまうだろうが。輪っかのまんま固まってるところに鷹か何かが来て、そのまま喰われてお終いさ」  俺が至極まっとうな答え(と、思う。生物には明るい方じゃないが、そもそもそんな状態になっている蛇自体存在するか疑わしい)を教えてやると、下らない質問をぶつけて来た男はただそうか、と呟いてまたひたすら腰を振り続ける作業に戻った。  ああ、疲れる。馬鹿に限ってどうしてこう際限なく意味の無い質問を思い付くのか、その答えを論文にでも纏めたら精神医学の分野で賞でも取れるんじゃないのだろうか。  世界は馬鹿で溢れてる。けど、実際のところ本物は凄く少ない。周りから馬鹿だ馬鹿だと言われ続けたり、自分からワタシは馬鹿ですので、何て言う奴の大半は仮性馬鹿だ。いざっていう時には、ちゃんとムケる。普段は馬鹿だと思われてる方が楽だし、都合が良いからそう振舞ってるだけなんだろう。  しかし残念なことに、今俺の上に乗っかってる男は本物、絶対にムケない真性馬鹿だ。こいつがどれだけ馬鹿なのかということを全部詳しく説明すると、それだけで恐ろしく時間がかかる上に多分半分も信じて貰えねえだろうから、ここでは簡単に言っておく。   
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