白猫とサイコロ

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「砲撃開始!」  敬礼と共に、アドルフが大砲(繰り返すが、空砲)に点火した。爆発音を合図に、南軍が登場する。今回は橋の上に全員集合か。ポーズでも決めてくれりゃあ笑えるんだが。 「行け!」  サザンカは相変わらずの大声だ。アドルフもいつも通り、太った腹にベルトをきつく締めて、とことこ走りながら自動小銃を振り回している。緑は大砲に寄り掛かって居眠りしているし、スバルは真面目に騎兵銃を構えて駆け出しているし、月子はうっとりした目で南軍の方を見てるし、サイコロは俺にくっついて尻を撫で回しているし……終わったら相手してやるから今はやめろ、おい。  いつもと同じだ。確かにここは戦場だけど、今日は『戦死者』の予定は無いから緊張感も無い。  何もかも安全に終わる、はずだった。
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