白猫とサイコロ

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【2・白猫】  男同士の色恋は不浄、という考えを、どうやらニンゲンは持っているらしい。ニンゲンというのは侵略者たちの総称で、俺達の祖先が拉致された時に自分からそう名乗ってみせたそうだ。今俺達が住んでいる土地では、『人間』という文字を当てる。土地によって『human』という字を当てたり、色々あるようだが、俺が知っているのはこのふたつだけだ。  俺達は、エルフ族の最期の生き残り。何でこうなっちまったかと言えば、その説明はサイコロの馬鹿さ加減を伝えるよりずっと簡単だ。  もう何百年も前のことらしいが、俺達の祖先が住んでいた星に『人間』がやって来た。『地球』という星(つまり、ここ)から来た『人間』は、最初こそ謙虚だったものの、俺達種族に動物程度の知能しか無いと知るや否や、あっと言う間に侵略を始めたと言う。  何も知らない俺が聞いても腹が立つが、良く良く考えて見ればそれも仕方の無いことだ。その頃既に地球はどんどん狭くなっていて、どこか他に住める土地を見つけなければ人間は滅びるしかなかった。俺達種族が当時サイコロ並みの馬鹿ばっかりで、反抗しようとしなかったのも十分悪かったと思う。俺が逆の立場だったら同じことを考えたかもしれないし、だからあんまり人間のことは悪く言えない。好きではなかったとしても、だ。 ……まあ結論から言うと、そうやって星を乗っ取ったところで、全滅を少し遅らせることにしかならなかったわけなんだが。俺達の星は結構脆くて、人間が侵略の際に持ち込んだ細菌やら何やらに侵されてすぐに使い物にならなくなっちまったそうだ。その間にも徐々に縮んで行く地球の土地と、腐った星の上でばたばた死んで行くエルフ族を見て、人間はとうとう最期の手段に出た。
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