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【3・白猫】
「全隊、止まれ! 砲撃用意!」
サザンカが馬鹿でかい声で叫んで、何かの儀式みたいに日本刀を掲げる。いつも思うんだが、人数もいないんだからもう少し声を落としても良さそうなもんだ。
て言うか、砲撃用意つったってかなり前に最期の砲弾使っちまって、それ以来補充も来ないもんで空砲だけ撃って誤魔化してるんじゃねえか。
軍曹の持ってる地図にひとつだけ残っていた島、それは今は北と南ですぱっと別れてて、お互いの領土を巡って戦争を続けている。もう人間もいい加減少ないんだし、とっとと和解しちまえば良いんだが、人間様の考えることはわからない。北側は南側の方が食料がたっぷりあって空気も水も奇麗だと思い込まされているし、多分南側はその逆を信じてる。
俺達は北側、昔はカント―と呼ばれていた辺りから北の方の、トーホクと呼ばれていた土地を守る北兵だ。憎き南の兵達をぶっ殺して、向こうの土地、キューシューを頂くために日々戦っている(あくまで表向きは、だ。さっきの軍曹を参照してもらえばわかるだろうが、本気でやる気のある奴は一人もいない)。戦う場所、即ち戦場は、北と南のど真ん中、カントーの巨大な広場だ。昔はばかでかい屋根が被さっていたみたいだが、すっかり破れちまって太陽の光がもろに当たるし、客席みたいな椅子が周りをぐるっと囲んではいるけど、実際に観客が座っているのを見たことは一度も無い。当然、地面は雑草だらけ。トーキョードームとか呼ばれてて、本来なら何かのスポーツをやる場所だったみたいだけど、生憎と今は血生臭い戦争のために使われている。
せっかくだから、俺と一緒に戦っている北兵のメンバーについて軽く説明しておこう。
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