眠れる夜

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大人の世界は何かとしんどい。もし宇宙の裏側にいけたらいいな、と想いながらアパートに帰っていた。わたしは無能もので愚か者だそうだ。会社、辞めたいな、と想った。わたしが就職活動のときについた嘘に乗っかかったからしんどいのかなとも思った。嘘といっても、そうしないと入社できないし入社するためにきちんとみせるために話したことだけどもう真四角の会社で心の中も真四角に押し込めて生きていくのはつらい。そう想いながらアパートのドアをあけ、板の間に小さな台所と洗濯機置き場、トイレと風呂があり、奥には縦にベットがちょうど入る長さの部屋と本棚と白いテーブルがあった。体がだるく重かった。簡単に夕食をとるとわたしは深い眠りに入った。夢の中で時折、会う、のが、ウナギ男だった。原っぱの土管の後ろに隠れていてこちらをみている。まん丸い目をしてみている。体はウナギの稚魚が大きくなったみたいで白かった。ウナギ男がでてくるときはわたしは苦しんでいるときだ。すごく苦しくてうなされているときにウナギ男は必ずでてくるのだ。目が覚めると寝汗でびっしょりとなっていた。隣をみるとウナギ男が眠っていた。 「嘘・・・でしょ・・・」  わたしは驚いた。 「君が心配で来ちゃったよ」  とウナギ男はいった。 「えっ」  わたしは想わず聞き返してしまった。なんだか聞き覚えのある昔懐かしい場所で聴いたことがあるようなのんびりとした声だった。 「君を気にかけているものの化身なんだ」  わたしは緊張の糸が切れて泣いてしまった。 「よしよし」  のんびりとした声でウナギ男がいった。ウナギ男の声はわたしの心に響いた。わたしは泣き続けた。 「よしよし。大人になるとつらいことばっかりだよ、誰でもだよ」  ウナギ男はやわらかい声でいった。わたしはほっとした。しっかりしなきゃいけない。強くなきゃいけない。そう想って一人で頑張っていた。だけど、だけど、今のわたしは少女の頃みた夢の先の姿ではなかった。わたしは深く落ち込んだ。 「誰でもだよ。いつまでも少女ではいられないから」  ウナギ男はわたしの心が待っていたのかなと想った。ウナギ男は、朝起きると、突然しゃきっとした。朝ご飯もつくってくれた。アイロンもかけてくれた。わたしは手を振って部屋を後にした。
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