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「好きです、付き合ってください」
メッセージアプリで届いたそんな一文に、あたしは驚いた。スマホが床にぶつかる音をやけに遠くで聞いた気がする。好きです、付き合ってください?
私は再度その文章を読むために、スマホを拾う。好きです、付き合ってください。やっぱり、そう書いてあった。
もうこのメッセージには既読がついてしまったので、きっと相手の子は焦っているに違いない。どうだろう。じっと画面を見つめて待っているのか、それともほかのことをして気を紛らわせているのか。私なら筋トレとかしちゃうかな。そう思ったら、何をしているのかどうしても気になった。
「今何しているの?」
すぐに既読がついた。画面を見つめる派だったか、3組の加瀬君は。
「夏樹さんからの返事を待っているよ」
そんなメッセージと共に、かわいらしいスタンプ。にこにこするファンシーなクマの周りにピンクのハートが飛んでいるような。男子もスタンプ使うんだって初めて知って興味深い。
「スタンプ、結構使う派?」
「まあ、そこそこね」
やっぱり同じクマが今度はボールの上で逆立ちしながらウインクしていた。なんだこのクマ、曲芸師みたいだな。
「このクマ、なんなの」
「わかんない。可愛いから、飼ってしまった」
思わぬ誤変換と共に、てへぺろして頭を小突くクマ。私は噴出してしまう。
「飼うな」
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