1人が本棚に入れています
本棚に追加
叩きつけるように言われて、もうメロンパンのことは脳みそから吹き飛んでしまう。
「律……?」
律のこんな顔初めて見る。もっちゃんがおろおろと、律の肘に触れようとするが律は勢いよく振り払い、私を、私だけを睨み付けた。
「私が、好きなのは、あんただよ!」
律はそれだけ言うと、踵を返して走りだし、教室から出て行ってしまった。机に広げられたままのかわいらしいお弁当と、うつむくもっちゃんと、それからメロンパンを握って固まる私。
「……り、律、なんて言ってたか、もっちゃん聞こえた?」
もっちゃんはうつむいたまま、静かに頷く。
「聞こえていたし、知ってたよ。律が夏樹のこと好きだってこと」
「嘘……でしょ……」
つぶやくと、もっちゃんは勢いよく顔を上げ、強い目で私を見た。
「嘘じゃない、嘘なんかじゃないよ。律はずっと、夏樹が好きだったんだよ」
「……そう、だったんだ」
だから、最近ずっといらいらしていたんだ。そりゃ、ムカつくよね。私はメロンパンをつくえに置いて、席を立った。
「ちょっと、律探してくる!」
探して見つけて捕まえて、そして、なんて言えばいいのかわからないけど。
とにかく、なにかを言わなきゃならない。
私は教室を出た。走りながら律を探しながら、頭の中では今までの数年間が浮かんでは消えていた。これが走馬灯、と思ったりもした。
最初のコメントを投稿しよう!