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始めは全然好きではなかった加瀬のことも考えた。加瀬を好きになるたび、もしかしたら律は傷ついていたのかもしれなかった。だとしたら、律を捕まえたらまず謝るべきだろうか。だけど恋愛って謝罪しなきゃならないことなんだろうか、もうわからない。
昼休みが終わる頃、私が律を見つけたのは裏庭だった。壁が黒ずみ地面からは白いキノコがいくつも生えているような、普段なら誰も近寄らない場所に、律は体育座りをしていた。
「スカート汚れるよ」
声をかけると、律は私を振り向いた。涙でメイクがぐしゃぐしゃだ。美人が台無しだった。
「別に汚れてもいい」
「そう?そうか」
私も、律に並んで座る。地面はひんやりしていた。
「律。私さあ、ちょっと無神経だったね?」
私は自身の今までの言動を思い返して言った。
律は否定せず、こくんとうなづく。
「無神経だし鈍いし最悪」
「そこは、謝る、ごめん。でも、律の気持ちに応えられないのは……なんていうか、その、ごめん、じゃない気がするんだけど、どう?」
「私も、そう思うよ。そこは謝らなくていいよ、わかってるし」
律は言いながら鼻をすする。
「加瀬と幸せになって欲しい気持ちも、0じゃないんだけど、でも、夏樹と加瀬が幸せに過ごす日々を想うと、苦しくて、もう、助からないとか考えちゃうわけ」
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