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風鈴がひときわ強くサランと鳴った。
強い風が吹いたらしい。
過去を思い返していた僕の意識も、その風により引き戻された。
煙草に火をつける。もう四本目だった。
喉がガラついてくる。一度だけ吸い、煙草を瓶の中に突っ込む。
まだ宴会は続いている。何か飲み物でももらおうかと立ち上がった時、瓶のコーラが差し出される。
「一緒に飲みませんか?」
由美子だった。
「お酒ってどうも苦手で」
そう言って笑う由美子は、あの頃とほとんど変わっていなかった。顔立ちは大人っぽくなったが、仕草やはにかんだような表情は、昔のままだった。
僕は瓶コーラを受け取り、栓をあけた。
由美子が隣に腰掛ける。
「お姉ちゃん、気にしてました」
「何を」
コーラを飲む。やはり、普通のコーラより甘く感じる。
「清水さんのこと。なにか悪いことしたのかなって。なにがあったのか聞きましたけど、怒って当然ですよね」
由美子はコーラの瓶をなでながら、言う。
「まだ、怒ってますか?」
風鈴が、静かに鳴る。
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