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光が反射している。
季節外れの風鈴が、光を吸収しながら、サランサランと不思議な音をたてている。
僕はそれをぼんやりとみつめながら、瓶コーラを飲んでいた。
後ろのほうから話し声が聞こえる。でも不思議とその声は小さく感じて、風鈴の音だけが僕の耳朶に響いていた。
「それにしても、早すぎるよな」
「そうよね。まだ若いのに」
「いきなり倒れて、病院に行ったら、もう助かりませんだろ? なんか兆候とかなかったのか?」
遠くの方でそんな会話が聞こえる。
サランサラン。風鈴が強い風に吹かれて、また鳴った。冷たい風。四月に入ってからは少し暖かくなったけれど、今日は少し寒い。
瓶コーラを口に運ぶが、もう空だった。
「お久しぶりです」
不意に、すぐ横で声がした。
「何年振りでしょうか?」
ゆっくり首を動かす。自分の体とは思えないほど、重く感じた。
「お姉ちゃん、喜んでると思います。清水さんが来てくれて」
感情のこもっていない声で言う。いや、悲しみが感情を覆ってしまい、そう感じるだけかもしれない。まだ、感情を悲しみ以外に割く余裕がないのだろう。
「死んだ人間はなにも感じないだろう」
突き放したような言い方に なってしまった。
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