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驚き
午後一時を少し過ぎたところである。
まばらだった校庭の人影は、既に三十人を超えるほどになっていた。ただでさえ暑いのに、これだけの人が集まればとんでもないものだ。人の群れを木陰に移してみたが、流れ出す汗が止まることはなかった。
集まった人々の顔を眺めてみる。よく知った顔もあれば、ほとんど見たことない顔もある。あの話を聞けば、これらの顔はどう変わるのだろう。美利は、困惑の表情が揃うのを思い浮かべた。ひょっとすると、泣き出すやつもいるかもしれない。
美利自身、昨日江畠さんから聞いたときには泣きそうになった。
「嘘…ですよね…。」
「明日、ここ、閉めるから。」
まさか、こんなにもあっさり白狐の会が閉じられる日が来るとは思ってもみなかった。
最後の日は、大きな相手と刺し違えて消えていくものだと勝手に思っていた。
白狐の会は、生徒会や職員会に対抗する革新派の勢力である。五年前、代表協議会の司会しかしない情けない生徒会に代わって生徒の意見を代弁する組織として設立された。創ったのは、涌田さんと古本さんという二人の生徒。最初は全く相手にされなかったそうだが、今の代表江畠さんが入った頃から、状況は変わったそうだ。
江畠さんは、実力もカリスマ性も備えた、恐ろしい存在である。昨年代表を引き継いでから、さらに勢力は拡大。今や、学校関係者で知らない者はおらず、クラス委員、生徒会、さらには教員にまで協力者がいるという。中には、江畠さんしか協力者だと知らない者もいるらしい。そのせいもあってか、江畠さんには黒い噂も絶えなかった。
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