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気付けば、男は暗闇の中にいた。
体を起こそうと腕に力を入れてみるが、何故だか身体中が鉛になったかのように酷く重たい。
どうにか立ち上がろうと動かした足にはしる鈍い痛み。どうやら足をくじいたらしい。
男は立ち上がるのを諦め、またその場に寝そべった。
曇っているのか月も星もない真っ暗な空がやけに遠く感じる。
「……ここはどこだ。俺は一体ここで何を…?」
がさり。
ふと辺りの茂みが不自然に揺れた。だが風は吹いていない。
熊か?猪か?
男の頭によぎるのはいずれも自らの死を連想させるものばかり。
もう駄目だ、観念したようにゆっくりと目を瞑った時だった。
「あ、気が付きましたー?」
突然どこからか響いた若い男の声。
恐る恐る開いた瞳に映ったのは熊でも猪でもなく、紛れもない人間だった。
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