息子たちのはてしない物語

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 たった一人の歯科技工士の抱える虚無を母胎に、BBBは、ファンタージェンは、そしてモンデンキントは生まれた。これが実際のところだ――しかしここで一つ問題がある。カール・コンラート・コレアンダー 、つまりあの不思議な古本屋の店主、彼は実在するのだ。私も一度だけ、会ったことがある――そして彼のイニシャルはKKK、つまりあの有名なチェコの作家の作品に登場する男のイニシャルと共通する――私はこう考える、KKKこそはすべての黒幕であると。つまり孤独な歯科技工士に物語の魅力を教えたのも――歯科技工士はKKKの店から大量の書物を購入している――そして男の中の「虚無」を見抜き、それに言葉で形を与えるように焚きつけたのも、彼の仕業だと。 ではKKKの目的はいったい何なのか? それは彼の出自に関係がある。秘密を明かそう。KKKこそあの有名なチェコの作家、KAFKAの実の息子に他ならない。これは文学的修辞ではなく、事実である。彼から直接聞いた話だ――つまりKAFKAは己の息子が登場する小説を書いていたというわけだ――KKKの目的はもうおわかりだろう。彼はKAFKAの「虚無」から生み出された存在である。つまり彼が生きていくためには「虚無」が必要なのだ――ちょうど、灰色の男たちが「時間」を必要としたように。彼は古本を集める(なぜならそれが虚無の産物だから)。そして「虚無」を抱えた人々にそれを与え、その人の「虚無」に言葉を、力を持たせる。人々は新たな「虚無」の物語を紡いでゆく――こうしてKKK――またの名をミヒャエル・エンデ――は永遠に生き続ける。KAFKAも永遠に生き続ける。虚無が存在する限り、その息子たちも永遠に生き続ける。息子たちのはてしない物語は20世紀初頭に始まり、21世紀の現在、まだ終わりを見ない。
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