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「どうしたの?早く行かないと!」
慣れない下駄で必死に走る彼女は、急に立ち止まった僕に眉をひそめた。
「もう、いいんだ」
「え…どういうこと?」
僕はやっとわかった
「あの約束は、君とした約束じゃないよね?」
ー今度は一緒に願い事を書こうねー
僕の記憶の中の彼女
「どうしたの?何を言ってるの?」
僕の目の前の彼女
「もう、"彼女"のふりなんてしなくていいんだよ」
僕は彼女を抱きしめた。
「いつから気づいていたの?」
答えるかわりに僕は彼女を抱きしめる手に力を込めた。
「たぶん、最初から。"彼女"はもういないんだね」
僕の問いに答えはない。きっとそれが真実だから。
僕の腕の中で、彼女はふっと微笑んで、
消えていった。
蝶がひらり
「幸せをありがとう」
きっとあれは彼女が僕のために残してくれた最後の想い。
僕の願いは、君の幸せ。
君は、幸せだったかな?
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