act.3 A gift of Christmas Eve. ―聖夜の贈りもの―

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・2・ カーテンの透き間から差し込む陽の光。  街路樹に止まり、愛らしく囀る(さえずる)鳥たちの声が、爽やかな朝を演出している。  昨夜はいつの間にか眠ってしまい、目覚めると美咲はベッドに寝かされていた。冬馬がベッドまで運んでくれたのだろう。美咲は冬馬に感謝しつつ、つかの間の惰眠を貪る。  (もう少し、こうしてたいけど……でも、そろそろ起きなきゃね)  昨夜はそのまま寝落ちしてしまったので、風呂に入っていない。今日は仕事も休みだ、もう少しベッドでごろごろとしていたいところではあるが、ゆっくり入浴しようとベッドから抜け出した。 美咲が暮らしている賃貸マンションは、二LDKの最新式コンドミニアムである。  独身女性のひとり暮らしにしては、些か豪勢な暮らしであるのは否めないが、彼女のスペックであればなるほど合点がいった。  広々と開放感のある、アイランドタイプのダイニングキッチンは、女性であれば誰もが腕がなりそうな設備が整えられた、ヨーロッパ式キッチンである。  美咲も休日は、料理の作り置きをしたり菓子を作ったりと、趣味が高じてこの最新鋭のキッチンを使いこなしているが、今朝はキッチンに立つ気力は皆無であった。  昨夜の送別会では、男性教諭との飲み比べをし、帰宅後は冬馬の用意したスプマンテを平らげて、飲みに飲んでしっかり二日酔い街道まっしぐらなのである。
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