act.1 The encounter of the destiny ―運命の出逢い―

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・1・ ひぐらし鳴きだす、夏も終わりの学園都市が心臓部、私立・翡翠ヶ丘学園。  中高一貫の男子校である、私立・翡翠ヶ丘学園高等部は、学生たちの熱気も漲る翡翠ヶ丘学園祭の真っ盛りである。    学園都市という、一見聞きしに珍しいアカデミー都市群は、翡翠ヶ丘幼稚舎・小等部・大学部と、紅一点である女子高が建ちならぶ、学園都市の象徴のことである。    それら教学機関の中心に君臨するのが、名門男子校である、私立・翡翠ヶ丘学園なのだ。   この学園の校訓として、翡翠ヶ丘学園の生徒は必ず部活動に取り組む決まりがある。  ひとつは部活動をとおし、仲間との連帯意識と秩序を身につけ、人間関係を磨く目的。  ひとつは部活動をとおし、先輩同輩後輩との上下関係を潤滑に行い、後の会社組織に対する、スマート且つ誠実なる社交性と、受け応えを学ぶというものである。    ともあれ、教学はもとより、部活動に取り組む姿勢は他校の群を抜き、殆んどの部が修める成績は全国トップ入りを果たしている。類を見ない、勉動並んでのエリート校というわけだ。  もうひとつの特色を挙げるならば、全校生徒の九割が名家の子息たちということだろう。残り一割は外部入学の一般生徒と、スポーツ・学力での特待生である。    学園の創立者である「月森 煌一郎」は、戦後この見晴らしの良い丘「翡翠ヶ丘」の土地を買い取り、日本の行く末を担うべく若者を育てる為の学び舎を設立した。    当時から一族経営である翡翠ヶ丘学園は、現在「月森グループ」が学園都市全体を運営しており、多岐に亘るマーケティング経営で培ったノウハウを生かし、学生が充実した生活を送り、伸びやかに又自立した環境を提供している。  教育機関といえど、いわばビジネスなのである。
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