4 永久契約

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 17戦目:子どもの日。あえて夕方に突撃。期待通り子供らの力で家に上げられ晩飯。親父は同席するも会話無し。それ以外は和やかな時間を過ごし退去。  18戦目:6月お袋の誕生日。中華料理店で晩飯設定。意外なことに親父も随行。苦い表情の親父以外は全てが楽しく食事が進む。  19戦目:お盆。夕方訪問し,子供らと風呂に入り花火を楽しみ,晩飯。浩二さんのすすめるままに俺も圭も酒をいただく。お袋が当然のように離れに布団を敷き泊まることとなった。事前にその可能性を連絡していたからお泊まりセットも万全だ。   来客用布団でごろごろする子供らが, 俺たち二人をじっと見る。『ゆうとにーさん,けいにーさんとなかがいいね』『いつもいっしょだね』『にぃーに』  圭が優しく説明した。『そう,勇翔と俺はお互いに大好きで,とても仲がいいんだ。大雅君やすずちゃんやりんちゃんとも,同じように仲良くなりたいな,家族みたいにね』締めに圭のにっこりビームだ。  これには子供らがハートを射貫かれたようだった。『もう家族みたいだよ,ボクたち』『アタシ,けいにーさん,大好きよ。あっ…,ゆうとにーさんもね』付け足しっぽい。『しゅきぃ』りんが圭に抱きつく。女は正直だ…。 《圭と付き合って4年目》  『焦らず,怒らず,休まず,諦めず』作戦は丸3年かけて,ここまでこぎ着けた。  長い道のりだった。圭と一緒だったからくじけずに続けられたけど,本当のところ『怒らず』はかなり怪しかった。親父に邪険に扱われた初期は,退散したあと実家の庭の石やブロック塀を蹴ったものだ。帰る車の中で大声で叫んだことも一度や二度ではない。アパートに帰ってどうしようもない怒りで震える身体を, 圭が抱きしめてくれるのが常だった。強く抱きしめるときもあったし,やんわり触れるだけの抱擁もあった。圭だって平常心でいられない時があっただろう。でも,中山の家に行く頃には必ず何かしら手土産を準備しておき,無言で俺の背中を押してくれた。  圭のもくろみ通り,お袋や子供たちが早い段階で俺たちの理解者となってくれたのには力づけられた。女性は事態を受け入れる力があるし,子供たちには偏見がない。そのことは圭と俺のような関係には,ものすごく有り難いことだ。  
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