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「詳細は改めましてご連絡させて頂きます」
うそ,そういう対応ありか? 圭が席を立ちそうにしたので,俺も慌てて立った。
「では,本日のご来店,ご利用,誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
そう言って深々とお辞儀をする。俺もぺこり,とお辞儀して,じゃ,どーも,と行って店を出た。
家に帰ってスマホを見ると,圭からラ○ンのメッセージが入っていた。
―内縁関係にある顧客の契約変更,第1号,大成功だ! お祝いにレストランに予約を入れた。ゴルフ場近くの,前に行けなかったステーキの美味いレストラン,午後8時。少し早めに帰るから一緒に行こう。勇翔の服は,あの礼服代わりのグレーのスーツでお願い。大好きなんだ―
大好きなんだ,って俺の事か,それともあのスーツのことか? どっちだよ?
圭のメッセージを何度も読み返す。圭の嬉しそうな笑顔が目に浮かぶ。よかったな。後に続けばいいな。
それから身体の一部のようになってるスマホを見る。このスマホから始まったんだよな,全てが。
俺は待ち受けにしている画像を右手の人差し指でなぞった。
スマホの画面で,おでんを前にして肩を寄せ合う男が二人,幸せそうに笑っていた。
本編終わり
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