310人が本棚に入れています
本棚に追加
俺だって変更くらいできるって。普通はすんの。今日はたまたまIDとパスワード忘れただけでさ。それくらいで馬鹿にされたら腹立つだろが。店員教育がなってないんだよ。
10分ほど家のある方向に車を走らせた。ちょっと冷静になってきた。
「…今,スマホ無いと…マズイよな…?」
郊外にある自宅が近くなるにつれて不安が募り始める。
―マズイ…,マズイよ,友だちと連絡できないしゲームできなくてネットも見れないと全然つまんないし仕事にも差し障るしいろいろ困る。あと,カノジョからの連絡も取れないし…。
「スマホ,新しいスマホ,手に入れなきゃな」
スマホ,スマホ…と呟きながら,自宅へ向かう道から街の方向へとUターンした。
少し走ると中規模の携帯ショップが見つかった。
「お―っ,良かった,あった携帯ショップ!…て…ド○モ…か」
一瞬躊躇した。その携帯メーカーは父母が使っていて,自分の中ではちょっと避けたい感じがしたのだ。
しかしこれから新たに他のショップを見つけるのも面倒で,ま,いっか,とそのまま駐車場に入った。
「お客様,お待たせいたしました。どうぞ5番カウンターにいらしてください」
予約票を受け取った女性店員が顔を向けた先で,若い男性店員が立ち上がった。
えwwww,またヤローかよ…。その隣のおねーさんが良かったのになぁ。
俺はちょっとムッとして5番カウンターに立った。
「本日お客様の担当をさせて頂きます,八柳(ヤツヤナギ)と申します。どうぞよろしくおねがいします。さっそくですが,どのようなご希望で…」
八柳は真面目を絵に描いたような対応をした。愛想笑いも無駄話も全くない。淡々と俺の希望を訊いて携帯電話の購入手続きを進めていった。正直つまんねぇ店員だなーと思わずにいられなかった。
途中,携帯電話機が並ぶコーナーに出向き,店員が勧める機種を選んだ。俺と好みが似てるんだな。その端末の操作方法を語るときは八柳もちょっと熱かった。,
煩わしいこともなく思ったより早く携帯電話を手に入れられそうだと気づいて,俺は途中から機嫌が良くなった。
いいじゃん,いいじゃん,プロっぽいこの対応。必要なことだけ話してくれて嫌みのない言い方。取り引きがさくさく進むよ~。
色っぽいおねーさんが担当じゃなくて良かったかも…とさえ思った。
最初のコメントを投稿しよう!