ある晴れた午後

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 土間で一礼し、俊秀と連れ立って表へ出る。  キンピカのBMWのボンネットが、傾いた午後の光の中で、やたらに眩しい。 「で、『次』ってなんだ」  ボソリと訊ねた儂に、頭上から、俊秀の短い苦笑がひとつ。 「『次』なんて、あるわけないでしょう、御院家。うちの檀家さんの数、今、どれぐらいのものかぐらい解ってるでしょうに」  こう言って、俊秀は後部座席のドアを開ける。車からは、むっと熱っぽい空気が流れ出てきた。  まったく。こっちだって、解っていて訊いとるというに。いちいち反応しおって。  まだまだ青い――  小さくほくそ笑んで、儂は車へと乗り込んだ。
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