2752人が本棚に入れています
本棚に追加
/651ページ
「わかってるって。彼に見られたら困るもんね」
意地の悪い言葉を、さも気にしていない風に軽い口調で言う。
罵って罵って、奪えばいいのに。
そしたら、私だってきちんと一線を引けるのに。
ずるい。
なんて、ずるいのは私か。
「ごめんね」
どうしたらいいのかわからない。
そんな時、とりあえず謝るのは私の悪い癖。
「てか、傷つくんですけど、何気に」
少しだけ本音まじりの口調。
「ごめん」
「ねぇ。それは、何に対する謝罪なの?」
「………」
少しだけ真剣な眼差しを向けられ、私は視線を逸らす。
「じゃあ、お詫びに今からの時間だけはオレのことだけ考えてよ」
「え……?」
「アカネちゃん、他の人のこと考えすぎだから」
「そんなことっ」
「別に、それは仕方ないと思うから」
ニッと笑う。
さもなにもないように。
「だから、今の時間だけはオレにちょうだい?」
「……ん」
最初のコメントを投稿しよう!