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「いたっっ」
思わず声を上げた。
痛みを発してる左の人差し指を見ると、切り傷からぷっくりと血が盛り上がっている。
紙で切った。よくある話。
近くに置いてあるボックスティッシュを取ろうと、反対の手を伸ばそうとした時。
「大丈夫!?」
横に座っている桃川くんが、咄嗟に怪我したほうの手を取ったかと思うと、それを自身の口に含んだ。
「……っっ!!」
驚きで声が出ない。
チュッチュッと、かすかに音を立てて吸う彼のうつむいた表情がほんの少し見える。
男の人、しかも、年下に使うのはヘンかもしれないけど、……色気がある。
吸われてる指先は、ズキンズキンと心臓の動きに合わせて痛み、唇のやわらかさと彼が這わせる舌でムズムズとしてくる。
鈍痛と快楽が入り混じって、私の心身は千切れてしまいそう。
離さなきゃ。咥えている彼を。
離さなきゃ。彼に注いでる自分の熱せられた視線を。
だけれども。
いけないと思う気持ちとはうらはらに、このまま彼と触れ合っていたいという卑しい気持ちが絡まり合って、私の心身は粉々になってしまいそう。
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