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私の中で、少しずつ小さくなっていくのを感じる。
彼が私の中からにゅるりと抜けた。
それはなんとなく、注射の針が抜ける感覚に似てる。
私はふとんに潜り込み、コソコソとはしたない涎を拭いていく。
いつもだったら、腹部についた粘着性の白濁液は、今日はついていない。
私が他の人とシたなによりの証拠。
シーツがびしょびしょ。冷たくなってる。
どんどんどんどん冷えていく。
私のカラダも。私のココロも。
「ねぇ、ゴミは普通に捨てていーの?」
私はふとんの中から顔を少しだけ出す。
彼は、あてがっていた使用済みのゴムを、ティッシュにくるんだりして後処理をしていた。
「あ、待って」
毛布にくるまり、キッチンからコンビニのいらなくなった袋を渡す。
「ん」
桃川くんはそれを受け取ると、その中にクシャクシャになったティッシュを入れていく。
時々ひどく神経質な私。
ゴミ箱にそのまま捨てるなんてできない。
その後、彼は名残惜しそうにしながらも、意外とあっさりと帰っていった。
情事の後のかすかな匂いと、あの人と同じ香水の香りを、ベッドに残して。
彼の道徳、彼女の不道徳 終
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