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久しぶり。
あなたの第一声は、いつもそんなだったね。
照れ臭そうに斜め上を見上げながら、口はへの字口。
その声は小さすぎて、改札を抜ける他の人たちの足音にまぎれて、消えてしまいそうなくらいだった。
それから二人で、構内にあるグリーンとオレンジのポップなカラーが溢れたカフェに入って。
1時間ほど、途切れ途切れの会話を続けて。
触れ合うこともないままに、またホームへと戻った。
あなたは、忙しい人。
翌日も、また朝早くから仕事があること知っていたから、その上でワガママになんかなれなかった。
わたしも連れていって。
こっちでの生活なんて、どうでもいいの。
そう言い切れるほど、若くない自分も、そこにいた。
わたしたちの間には、消しゴムでたやすく消してしまえない、遠く離れた距離。
新幹線で2時間の、切ない距離。
自分勝手な子供になりきれないわたしは、あなたの姿を扉がしゅんとさえぎる瞬間ですら、泣くことはなかった。
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