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笑って、笑って、涙が出た。
こぼれ落ちた雫がキラキラと陽に透けて、ブーツの爪先に当たって、ステンドグラスみたいにはじけた。
それを見たあなたが、叱られた子供みたいに眉をひそめる。
ごめんね、ってつぶやいた。
ううん、違う、そうじゃないの。
嬉しかった。
長いこと待ち焦がれたあなたをやっと目の前にしたら、気持ちが溢れ出してしまうのを、どうにも止められなかったの。
それは、まるで感情の特急列車。
甘く、ほろ苦い、ときめきのエクスプレス。
加速のついたGに体がうまく乗ってきてはくれなくて、その眩暈に、わたしはいつもたやすくやられてしまう。
でも、それも、いつか慣れてしまう時が来るのかしら。
あなたを想って胸が痛んだり、会いたくてすぐにでも駆け出したい衝動にかられたり。
そういうのも、少しずつ薄れていったりするのかな。
けれど、手を伸ばせば触れられるすぐ近くにあなたがいて、そんな時間がずっと長く続いた結果がそうなのであれば。
それは、とても愛おしいことなんじゃないかって思う。
だから、はじめよう。
ここから。
もう、二人は離ればなれなんかじゃないから。
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