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「そう言えば週末の準備とかもう済んでるのか?」
フォークにパスタを絡ませながら向かいに座る男性に声を掛ける男性。声を掛けられたのは、伸びきったチーズを器用に食べながら手にした一切れを食べる男性。
共に二十代後半と思しき容姿で、二人は同僚か何かだろうか、共にスーツを着ている。
「一応カメラや帽子とかの準備は済んでる。あ、水とかは途中のコンビニで買うわ。……で、そう言う佐野はどうなんだよ?」
「ばっちり、抜かりはない!」
佐野と呼ばれた男性はフォークに絡ませたパスタを口に含ませると、その味に舌つづみしつつも口の中に含ませたパスタが無くなるや新たなパスタを絡ませ始める。
「そう言えば、デコポンさんのブログ見たか? 二週間ほど前に行われた相馬原駐屯地での駐屯地際の様子、すっごいぞ」
「あぁ見たよ。ありゃ凄いな、同じ場所とはとても思えない人の数だった」
「まぁあれだ、あのエイプリルフール後に行われたイベントは何処も似た様なもんだって連絡来てたし、あれでも平均的なんだろ」
「にしても変な感じだよ。相馬原駐屯地には第十二『旅団』が駐在してた筈なのに、今じゃ第十二『師団』なんだから」
「あ、それってあれか、巨大化に伴う記憶の混濁ってやつか? 藤田」
「んん……どうなんだろ」
エイプリルフールのあの日、巨大化に伴い増えた人や物ではあったが、元々いた人々にも大きな変化があった。その最たるものが記憶の改ざんとも言うべき事態である。
まるで巨大化した後の日本が巨大化以前より存在しているかの如く、大多数の人々が当たり前の事として認識し生活していた。
ただ、それでも少数の人々の中には巨大化以前の記憶と言うものが僅かに残っている者もいる。
しかしながら、それは日常生活に特別支障をきたすものではなく、言い表せばそんな事もあったな程度のものであった。
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