準備は大事

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「まぁでもあれだろ、お前の言う巨大化以前と比べれば確かに師団にまた戻ったみたいだけどよ。それでも部隊改編で規模縮小してるし、冷戦の頃と比べれば大分スリムになったと思うけどな」  再びパスタを食べながら合間合間に話を続ける佐野。彼は藤田と異なり巨大化以前の記憶と言うものは残ってはいない。なので、現在の自衛隊の姿に違和感を覚える事もない。 「まぁ、どうせ違和感覚えたって元に戻る訳でもないしもう考えないようにはしてるけどさ。唯一駐屯地が無かったはずの奈良県に五條駐屯地があったり、装備も色々と知らないようなそうでないようなのが増えてたり改良されたりと。どうせこれらの違和感だってそのうち慣れるさ」  再び一切れ食べ終え最後の一切れに手を伸ばしながら、藤田はこの違和感を違和感と思わなくなるのも時間の問題だろうと告げた。  例え巨大化以前の記憶があっても、それを指摘したところで何かが変わる訳ではない。ならば唯一残された方法は、早く慣れるしかないのだ。 「空母持ってたりステルス配備してたり、万々歳な面は多いけどさ。でも、一つだけどうしても納得できない部分がある」 「え?」 「何でナナヨンが殆ど残ってないんだよ! しかも今残ってるのだって改良が施されたJ型とか呼ばれる奴ばっかだし! あぁ……、あの避弾径始を採り入れたコンパクトで可愛らしい砲塔はもう動かないのか、戦車らしからぬ全体的に漂うあの可愛さはもう感じられないのか」 「い、一応用途廃止車両として残ってるだろ」 「俺は生き生きと動いてるナナヨンが見たいんだよ! そりゃキュウマルとかヒトマルもいいさ、力強くてまさに戦車って感じで。でも、でも違うんだ。俺が見たいのはそんな間を可愛らしくすり抜けていくナナヨンが見たいんだ! マッチョになっちまったJ型なんかじゃねぇっ! それ以前の型のだ!」  そう言えばこいつ(藤田)は大の七四式戦車好きだったなと思い出した佐野は、熱く七四式戦車を語る藤田を横目で何事かと気にする他のお客の視線も感じつつ。取り敢えず熱くなっている藤田から何とか熱を覚まさせようと話をそらすため画策する。  それが功を奏したのか、何とか熱を冷ました藤田の姿を見て、一安心とばかりに佐野は小さくため息を零した。
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