準備は大事

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 と言っても。明日も平日で仕事なのでそれほど多くの自由時間を堪能できるわけではないが、それでも貴重なこの時間を藤田なりに有意義に過ごすべく取り組んでいるつもりであった。 「さてと、今日はどんな書き込みが……」  リビングの一角に設けられているパソコンデスク、そのパソコンデスクに合うように買い揃えた椅子に腰を下ろしながら、藤田は起動したパソコンのモニターに視線を合わせていた。  彼はインターネット上に数ある電子掲示板に接続すると、そこに書かれた内容に目を通していった。  その掲示板は、藤田と同様に巨大化以前の記憶を持っている日本全国の者達が集いその内容について書き合うものであった。  既に数多くの履歴が並び、現在進行形のスレッドがいくつも表示されている。  その中の一つ、日本の同盟国について様々な意見が書かれているスレッドにカーソルを合わせると迷う事無くクリックする。  既に数百近い書き込みが表示され、最新の書き込みについてはほんの一時間ほど前に書き込まれたばかりであった。  日本の同盟とは書かれていても、それは現在の同盟国たるアメリカ合衆国との関係についてではない。  ここで言う同盟とは現在よりも遡る事半世紀以上も昔、所謂第二次世界大戦と呼ばれる人類史に残る時代の事である。  第二次世界大戦の同盟国は日独伊三国同盟であるというのは、どうやら巨大化後でも変わってはいない様だが。しかし、記録は変わらずとも記憶では少々事情が異なるようだ。  書き込まれた内容を見ると、藤田も知らないような。まるで創作内の出来事のような歴史が書き連なっている。  ある人は、日本がアメリカ合衆国と当時のソビエト連邦と共に連合国側の一員として第二次世界大戦を戦ったと書いており。  またある人は、日本とイギリスの同盟、所謂日英同盟のもとに連合国側の一員として第二次世界大戦を戦ったと書いていたり。  またまたある人は、三国同盟どころか日本だけで世界の三分の一を有する巨大国家として君臨しており、残りの世界と第二次世界大戦を戦ったと書いていたりと。
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