始まり始まり

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「それが、信じられない事ですが。かつて行われたATF(先進戦術戦闘機計画)の際にF-22とその座を争った『YF-23』が航空自衛隊用として改良を加えられたうえで配備されているらしく……」 「YF-23だと、馬鹿な! あれはATFで選定されずその後はNASAに譲渡され、今では博物館で展示されてる品物だぞ。それが事もあろうに実戦配備だと!」  衝撃の報告内容に空軍高官の男性は場もわきまえず声を荒げる。が、直ぐに国防長官に諭されると、軽く先の無礼を詫び再び手元の資料に目を通し始める。 「その、先ほど彼も言っていたように、我々の認識では本来保有している筈も無いものが保有されているのだが。その点につてメーカー側は何と言っているのかね?」  一旦止まってしまった進行を再開すべく、大統領が適切な言葉を投げかけ大統領首席補佐官に進行を促す。 「はい。YF-23の製造に携わったノースロップ・グラマン社に問い合わせてみたのですが、巨大化以前には影も形もなかったはずが、今では見覚えのない契約書等や金銭の流れなどが残っており。この不可解な現象はノースロップ・グラマン社に限らず、巨大化後の自衛隊がいつの間にか有している装備に関連する企業にも見られています」 「つまり何かね、我々には全く身に覚えもないと言うのに必要な手順などは確りととられているのかね」 「そうなります。議会の承認記録等も確りと残っておりますし……」 「残念ですな。上手く事を運べば違約金として多額の賠償金を得られるかとも思いましたが、企業のみならず民間の情報媒体にも記憶が残っているとの報告もあります。これでは企業と口裏を合わせた所で合衆国の品位を落とすだけですな」  財務長官は金銭の観点からこの問題を見ていたようだが、軍の関係者は当然ながら別の視点から今回の問題を見ていた。
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