始まり始まり

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「財務長官、問題はそこではないのでは? 例え六十機程度とは言えあのF-22と鎬を削った戦闘機が。いや、鎬を削っていようがいまいが、未だ我が合衆国以外実戦配備していないステルス戦闘機が実戦配備されているのですよ」 「だが、数で言えば合衆国が実戦配備しているF-22の三割ほどであるし、そもそも日本は同盟国だ。その矛先が合衆国に向けられるとは思わないがね」  ステルス戦闘機は現時点ではアメリカ合衆国以外実戦配備している国はない。アメリカ合衆国以外の国々も実戦配備を急いで入るものの、やはり最高の軍事機密の一つたる機体、そう簡単には進まない。  そもそも当のアメリカ合衆国ですら、六十年代から実験を繰り返し八十年代から実用可能な本格的ステルス機の運用にこぎつけたのだ。  そんな苦労をあざ笑うかのように、一夜にして同盟国である日本がF-22と比べると数は少ないとは言え実戦配備し、更には生産施設まで有するようになってしまった。  例え実験機であろうとなかろうとステルス機は最高の軍事機密の塊、それが同盟国であっても他国に流れたのだから、軍の関係者達にしてみれば悲鳴に近い声をあげるのも当然だった。 「諸君、日本が新たに手に入れた玩具の矛先が何処を向くかを心配しているのはわが国だけではない。そもそも、私としてはわが国に向けられる可能性は低いと思っているがね。無論、万が一に備え私も出来る限りは努力するつもりだ。……さて、では最後に、JMSDF(海上自衛隊)の報告を」  周囲の熱を一旦冷まさせると、大統領はあえて最後にしておいた海上自衛隊の戦力についての報告を促す。  巨大化後の直後から一番早い段階で在日米海軍から報告が上がっては来ていたが、その変貌ぶりは世界の海を制するアメリカ合衆国にとって、もっとも重大な関心を寄せられていた。
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