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七夕(しちせき)の節句、私は黒い川に映る屋台の明かりを見つめていた。後ろからは賑わいが絶えず、声が私の背中に当たっては、目の前の川に吸い込まれていくみたいだ。
静かに流れる川と、私は同じだ。綿菓子のような甘ったるさと、焼きそばのような辛さを含んだ空気が辺りを包んでいるけど、私は楽しくもなんともない。
この世界で私は一人。祭りの中で一人ぼっちだ。別に、騒がしいところは嫌いじゃない。そうじゃなければここにはいない。
どうしてここにいるのかというと、それは最愛の人と、この町の七夕祭りで願い事をしたから。『また、来年もここに来よう』そのためにここに来たんだ。
なのに、その人はもうここにはいない。もう隣で、一緒に短冊を結ぶことはない。
世界で、私は一人。ここに来るのも、今夜で最後。
最後の願いは、どうしようか。
そう思っていたら、
「……!」
ん?
声がして振り返った。
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